先日、父と庭に出ておりますと、
家の裏に行った父が「大変だ大変だ!」と呼びに来ました。
なにごとかと一緒に裏へ。
行く途中も、無言で振り返り、こっちだこっちだ!と大慌ての父。
テレビの美談とかで、こういう犬いるよね。
案内したその先には、発作で倒れた飼い主が。
今回は違いました。いえ、そもそも私の父は犬ではないのでした。ふざけすぎちゃいかんぞ、きみ。
父の指差す先にはバケツに水がたまっており、そこにヤモリのやもたんがプカーンと!
今度はふたりで、大変だ大変だ!と騒いでると、やもたん生きてる。
ザッパーンとバケツの水を返し、呆然とするやもたんを、ふたりで励ましました。
やもたんの手を握れないのが残念だ。
やもたんは、ボーっとするばかりなので、
ちょっと・・・いけないかもね、とやもたんの枕もとでささやき合ってたんですが、
その内やもたんは元気を取り戻し、ちょろ・・・ちょろ・・・と、草むらに消えていきました。
おおお、よかった。
生きるの死ぬのと、なんも騒ぐことなんかない自然の前で、
私たち二人の、なんて不自然なことか。
滑稽で、おろか。
でも、私はこういう父を、人間らしいと思うのだ。
(だってあわててさー、自分でバケツ返せばいいのに。
父もヤモリ好きなのですね。)
こっけいでおろかで不自然で、それが自然な人間なのかもね。
その後作業してたら、視線を感じる。
誰かがあたしを・・・熱く見つめてる・・・?
ふと振り向くと、そこには立派なカマキリが。
ああ、あなた、お腹が大きい。卵がいるのかー。
あなたの子供たちが、そのお腹に入ってるのね。すごいね。
この世で、カマキリは、カマキリにしか作れないのよね。
いやー、すごいことしちゃってますね、あなた。
とか感動して話しかけてました。
カマキリママ、1歳くらいだろうに、威厳があってすごい迫力。
思わずひれふしそうよ。
カマキリママ、私をじーっと見つめるの。じーっとじーっと。
だから私も、じーっとママを見つめたら。
そしたらママ、
「この卵を産めるように、祈って。
もし産めなくても、もうすぐ死んで還ってくときには、
この世での務めを私が果たせたことを、祝って」
と言いました。
いーや、言っていました。
チーモ泣いちゃったもん。
視線を感じて振り向くと・・・誰もいない。
気のせいかーってこと、ない?
それたぶん、気のせいじゃないのよ。
よーく見てみて。人じゃないのかも。
電信柱や、草の陰、塀の上に、あなたを見てる子がいるのかも。
私の人生と、カマキリママの虫生の一瞬のすれ違い。会えてよかったわ。
晴れの日も、雨の日も、風の日もあったでしょう。
1人でたくましく生きたのね。あなたすごいわね。
私、祝うわね。
あなたが生まれたことと、一生懸命生きたことと、
役目を終えて死んでいくことを、心から祝うわ。
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